災害弱者

 午後6時が来たのに、辺りはまだ明るくて、そよ吹く風が気持ちいい。そう言えばさっきまで綺麗な青空が広がり、南のほうから低くて重たそうな雲が近づいていた。今は一面を覆ってはいるが、力強い雲は減り、スクリーンのような雲に取って代わっている。昨日の段階では今頃はもう暴風雨が始まっていて、娘夫婦達も早々に帰宅させているところだった。ところが今の時点で、運がいいのか悪いのか、まだ幕は上がっていない。これから始まるとんでもない状況の前の静けさか、あたかも草むらに潜んでいる獣にじっと狙いを定められているような気分だ。
 去年の台風のときは、何処からともなく浸入して来る水を雑巾でしみとりバケツに絞って移すという原始的な方法で数時間しのいだ。かの国の若い女性二人と同居していたから役に立った。僕ら夫婦だけでは腰が痛くて、長時間そんなことは出来ない。今年は二人だけだから、もう諦めようと言っている。朝起きて薬局に下りてくれば、水溜り状態で床は剥げるかもしれないが薬を水没させるようなことは無いだろう。僕らも既に災害弱者の年齢に達したのかもしれないが、居直って諦めれば「幸い弱者」だ。
 夜は停電になってしまう可能性があるので今日は早い時間にアップする。