井戸

 僕にとってはありがた迷惑だ。
 数日前に3ヶ月の応援部隊の3人がやってきた。彼女達は初対面の僕にTシャツ2枚とコーヒーをくれた。かの国から持ってきてくれたのだが、彼女達に入れ知恵した女性がいて、その助言に従ったらしい。日本に行ったらお父さんがいろいろな所に連れて行ってくれる。太鼓や着物も経験出来ると言ったらしいが、結構それは僕にはプレッシャーになる。と言うのは、和太鼓のコンサートは滞在中の3ヶ月の間にそんなにあるものではない。運のいい人は複数回いけるが、運が悪ければ山1回だ。今手元にあるのは9月の1回分だけで、土産をくれたのに1回では申し訳ない。
 今のところ9月一杯のスケジュールは埋まっているが、今日の午後は空白地帯だった。午前中岡山で用事を済まし、正午から4時まで漢方薬を作り、その後3人をオリーブ園と前島に連れて行った。
 色々連れて行って結局は牛窓のオリーブ園が一番綺麗だったという、灯台下暗しを何回も経験したので、時間が短くて済む地元コースで接待した。今日初めて取り入れたのが「前島フェリー」だ。わずか5分くらいの船旅だが、牛窓を海から見るのもいい。そして高松のいつも行くビルまでが見えることも発見した。3人の中に一人が僕くらいの英語力だったので単語で話したが、彼女は船に乗ったのが初めてだそうで、とても感動していた。目が輝くというのを地で行っていた。こんな些細なもてなしが、とても大きな喜びに変わってくれたのはありがたかった。
 向こうの国でどんな生活をしているのだろうと毎回興味を持つが、残り2人が小さなタトゥーを入れていた。僕の気持ちを削ぐようなことをしないで欲しい。僕のおせっかいは底なし沼ではない。枯れかけた井戸みたいに頼りないのだから。