扇風機

 漢方薬を作っているときにいつもと違う空気の流れを感じていた。下の方から風が吹いて来る。見ると海の色をした背の高い扇風機が回っていた。今年の夏は特別暑いから妻が買ったのかと思いきや、玉野教会でもう必要なくなった古い扇風機を貰って帰ったらしい。古くて必要なくなったからいる人は持ってかえってと言うことだったそうだ。最初に名指しされた女性が断ったので傍にいた妻が欲しいと言って譲ってもらったらしい。と言うことは、ただ近くで見てもきれいだし、風も心地よい。古いという意味がわからなかったが、貰うほうはそんなこと意に止めない性質だから、ただただあり難い。特に今年は今までの扇風機が全て壊れてしまって、扇風機無しで過ごしていた。エアコンをつけていればそんなに必要を感じないからなくても一向に構わないのだが、あればそれなりに助かる。
 このように僕は勿論妻も物に対して拘りは少ない。そのものが本来の機能を有してさえいれば、そのものの寿命が来るまで使う。物に命は勿論持ち合わせてはいないが命を与えることは出来る。だから僕は少なく持って、物達の命が尽きるのを見届ける。