奇特

 20億円寄付のニュースをテレビで見た。耳を疑ったが、世の中にはこういった人もいるのだと感心した。あまりにも縁遠い話だが、その額に驚かされて一瞬興味を持った。青森県立病院?に寄付したというのだから、そこの病院で命を助けられた人なのかと勘繰ったりするが、所詮関係のないことだ。ただこのニュースを聞いていて僕はどういった表現が正しいのか、或いはしっくりくるのかが気になった。自分でもどのような言葉で感想を表現するのか迷った。
 まず最初に頭に浮かんだ言葉は「なんて奇特な人」だった。そのうち匿名寄付のことを知り「なんてすがすがしい人」になり、青森市にも同額寄付したことを知り「なんて痛快な人」になった。いくら財産があるのかしらないが「なんてさっぱりした人」も候補に上がった。
 そのレベルの金額になると、もうほとんど具体的に価値を把握できないが、ひょっとしたら「持っていても仕方ない額」なのかもしれない。どんなに贅沢しようと思っても、僕など1日1万円を使うのに苦労する。かの国の人たちに使ってもらうことしか消化出来ない金額だ。その1万倍を毎日使えって言われているのと同じだから、その匿名の人もさぞ困ったのだろう。何でも青森県の寿命が短いのを憂えて、健康づくりに役立ててと寄付したらしいから僕の心配は必要ない。
 最早政治屋の精神が危篤状態のこの国で、良くぞ奇特な人が現れてくれたものだ。おなじ「きとく」でもここまで違うのかと情けなくなる。