皮肉

 田舎で自営だから、いわゆる会社帰りに仲間と食事をしたりお酒を飲んだりする経験は一度もない。仕事が終われば10秒で我が家だ。階段を上がるだけでいい。10秒で僕は気持ちを切り替える。昔はバレーボールをしていたから、大会の後打ち上げなどと言うものがあり、お酒を飲んだり食事をしたりしたこともあるが、そんなにやたら社会に顔を出すタイプではないのでそういった経験はかなり少ない。元々人と食事をしたり、お酒を飲んだりすることにそんなに魅力を感じないから、どうでもいいことなのだが、昨日過敏性腸症候群の方の電話注文の中で、何回も友達と食事をすることが出来るようになったと喜びの声を重ねてくれたのが印象に残った。都会で働いているその女性にとって、そういった機会は多いのだろう。口に出た回数で、彼女の喜びも伝わってきた。
 学校の保健委員会と言うものに出席すると、子供達の個食が話題にされることがある。一人で食べたり、子供達だけで食べたりすることを憂えているが、僕は基本的には一人で食べるのが好きだ。一番いいのは、ニュースを見ながらの食事だ。だからそのテーマになったら僕はしゃべる権利を失っている。学生時代、狭い監獄のようなアパートで、米に塩をかけて食べていた頃の名残だ。
 友人との食事を楽しめるお手伝いをしている薬剤師が、一人で摂る食事を好む人間だとは皮肉なものだ。