今回の大雨は岡山県ではどちらかと言うと西よりに被害が出た。東にある牛窓はその点幸運だった。雨は降り続いたが大きな雨ではなかった。恐怖を感じるようなものでもなく、時間帯によっては小雨のときもあった。そんなタイミングを見ては、娘が外に出ることを繰り返した。僕は僕の仕事があるからそんなに気にしていなかったが、すぐに帰ってきてそのまま二階に上がるから少し気になり始めた。すると妻と娘がある会話を始めたのでその意味がわかった。
 実は数日前に、我が家の外階段を上がりきったあたりに作っているツバメの巣から、雛が落ちたのだ。やっとツバメかなと思えるほど幼くて、ピヨピヨ手のひらで鳴く。結構かわいいものだが、そのままでは死んでしまう。階段の踊り場から手を伸ばしても届かないあたりに巣を作っているから戻してやることが出来ない。そこで仕方なく娘は、母親代わりになることに決めたみたいで、紙箱に木屑などでクッションを作り、巣の代わりを作った。まだ怖がることも知らないのか、それとも巣の上から人間を危害を加えない動物だと学んでいるのか、結構居心地よさそうにして、かわいい声で鳴く。
 となると餌をやらなければならない。それこそが娘が不可解な行動をとっていた理由だ。娘は、雨の中、駐車場に作った庭に出かけては虫を取ってきていたのだ。結構庭として完成してきたから、虫もよく見れば結構いるみたいで、バッタの子供みたいなのも結構取ってきている。蚊や、蛾ならまだいいが、小さなバッタはなんだかかわいそうになるが、今はツバメのヒナが中心だ。自然界は結構残酷で、生きていく力がないものには餌もくれない。親が餌を与えてくれないなら親代わりをして育ててみようと思ったみたいだ。
 モコを亡くしてから初めて大切にする命と巡り会ったのか。思いいれは傍で見ていて激しい。幸せなツバメ達だなと、つい擬人化してしまう。本当は恐怖でおののいているのかもしれないが。