葛藤

 僕にとってドラムTAOのコンサートは初めてだ。岡山県ではなかなか聴きに行くことは難しい。有名な太鼓集団も来るには来るが、総じてそうしたところのコンサートは平日が多い。恐らく大都市を週末にあてて、地方都市は平日に持ってくるのだろう。興行から考えたら当然といえば当然だ。
 数ヶ月前にチケットを手に入れ、コンサートに行きたい希望者を募って4人に決めていた。ところが昨日、会社で日曜出勤が決まってお昼過ぎでないと出発できないことになった。僕は仕事が出来るから好都合なのだが、彼女達は僕に悪いと思ったのだろう、通訳を入れて僕に謝ってきた。折角朝からコンサート以外の場所も案内してくれる計画を練ってくれていたのに、勝手に日曜出勤すると決めてという事らしい。そして通訳がその経緯について教えてくれた。実は彼女達は日曜日に出勤できることをとても喜んでいるらしいのだ。観光よりも和太鼓のコンサートよりも嬉しいのだそうだ。
 その話を聞いて、余計いとおしくなった。僕が10年来付き合っているかの国の人たちはさすがに選抜されて来日しているだけあって、田舎出身者の純朴さと勤勉さを兼ね備えている。大挙して押し寄せているかの国の人たちを僕は歓迎しているわけではない。むしろ逆だ。ただし、その人格に感動さえ覚える人たちは別だ。僕の心の中に相反する考えが時に葛藤する。しかし僕にとって一番大切なのは、アホノミクスなどに象徴されるごろつき政治屋から活躍の場すら与えられないこの国の人たちだ。