有り難迷惑

 有り難いけれど、迷惑。まさに諺通りだった。
 丁度一月前。僕はかの国の女性達数人を連れて福山のバラ祭りに行くために邑久駅のホームに立っていた。するとベンチに腰掛けていた若い女性が僕を見て笑顔で会釈してくれた。面識がなかったので、僕は自分を指差し、その後、手を振って何かの間違いであるようなサインを送った。ところがその女性はかの国の人で、僕が連れていた女性と面識があり、その女性達のフェイスブックで僕の顔は何度も見ていたらしい。だから恐らく自然に挨拶をしてくれたのだと思う。その時の僕のつれない対処の仕方がずっと頭に残っていて、いつかお詫びをしたいと思っていて、それが今日かなった。
 同じ会社の工場でも、僕みたいなおせっかいが近所にいない限り、安物の雑誌の表紙みたいな日本の楽しみ方しかしていない。そこで今日、その女性達を僕の好きな香川県めぐりに連れて行ったのだが、何と昼ご飯が近づいた頃、おもむろに透明なコンビニのビニール袋から巻き寿司を取り出して食べるように促された。唯でさえその種のものをコンビニで買って食べることはないのに、やっと何の予定もない貴重な日曜日に、まずい巻き寿司を食べなければならないのかとショックだった。案の定、いつ買ったのかしらないが,パサパサして食べにくかった。
 僕の予定では香川県に折角行くのだからうどんを食べない選択肢はない。それと3ヶ月の短期の応援部隊の人も含まれていたから、食べれるものが何かしら必ずあるホテルのバイキングを考えていた。僕自身も、日頃口にしない食材を選ぶことができるから久々にバイキングもいいかと思っていた。ところが、ささやかな僕の願いは無残にも打ち砕かれた。港のすぐ傍にある高松城跡の公園のベンチが恨めしい。これから何度も訪ねるだろう場所なのに、トラウマになりそうだ。気を利かしてくれた彼女達の気持ちが「有り難迷惑じゃ」