怖い

 「きょうてい!」思わず声が出てしまったが、相手が岡山の人でないと僕の驚きは伝わらない。目の前の男性も岡山の人だし、牛窓の人だから当然分かるが、運のいいことに最近補聴器の調子が悪くて僕の芯からの驚きには気がつかなかったみたいだ。自尊心を傷つけることは出来ないが、最近の高齢者の運転による事故の多発を受けて、その運転能力の劣化を耳にしすぎているから自然に口が反応した。
 と言うのは、その男性が白内障の手術を受けて3日目で自分で車を運転してやってきたのだ。田舎だから交通量が激しいわけではないからかまわないが、そのことに驚いたわけではない。驚いたのは手術以前の状態を教えてくれたときだ。「先生、よお見えるようになったんじゃ、最近の手術は大したもんじゃな。今までは信号もよう見えんかったのに、今は何色か分かるんじゃ!」
 恐ろしや、恐ろしや!