運動靴

 大ぶりで底が厚く、ごつごつとしたデザインの運動靴が『アグリー(醜い)シューズ』と呼ばれ、世界中で人気になっているらしい。米リーボックの広報担当者は、「海外の有名人がはいた。服と合わせずにあえて足もとだけ『外す』コーディネートだ」と言う。
 
 この記事をインターネットで見つけ、少し残念だった。と言うのはひょっとしたら40数年前に、僕はこの流行と同じことを起こしえていたかもしれないからだ。醜いシューズなど、そのころは勿論、その後40年継続して履き続けている。いわば僕こそ元祖醜いシューズなのだ。
 学生時代、食べる金もなかったから、靴を買うお金などあるはずがない。いつ靴を買ったのか記憶がないが、おそらく出費の最後尾くらいの価値しか僕にはなかった。だから醜いを通り越して「臭い」も併せ持っていたから、元祖の名に恥じない汚さだ。いつか五つの赤い風船のコンサートに行って観客席で聴いていた時、何か臭いなと感じ始めた。そしてふと気がついて自分の靴を体を折り曲げて臭ってみると、正に犯人そのものだった。今でもその時の出来事をよく覚えている。靴って洗わなければ臭いんだと初めて知った。通常靴と僕の鼻がそんなに接近することもないから分からなかったが、以来靴の臭いだけは・・・あいも変らず気にならず、洗ったりしたことはない。どうせ足を覆うものだから臭いのが当たり前、すぐに汚れるのだから車と同じ、無駄なことはしない。
 ただ、念のため、僕の名誉のために付け加えておくが、僕は靴は洗わなかったが、足は洗った。ご法度の裏街道からでござんす。