情報

 3年間の日本滞在中に帰国できる唯一の理由は「親の死」だ。それ以外に自由に帰国は出来ない。もっとも、1時間でも多く働きたい彼女達にそんな希望は全くないから、不満はない。今日その特例で帰国していたある女性が再び日本に帰ってきた。今年に入ってから二人目だ。まだ20代の女性の親だから僕より若い親がほとんどだ。酒もタバコもたしなむ人が多いみたいでガンが原因で亡くなる方が多い。
 夕方再来日の挨拶に来た時にもう一人の女性がついてきた。通訳を連れてきたから何か用事があるのだろうと思っていたら、これもまたガンの相談だった。スマホである写真を見せてくれた。それはガンを標榜している健康食品の写真だった。日本語なのにどうしてかの国の人が知っているのだろうと不思議だが、こういったことはしばしば経験している。日本の商品は評価が高いらしくて、健康食品で病気が治ると信じている。こういった類のものは詐欺まがいだと説明するがなかなかわかってはもらえないが、少なくとも僕が関係しているかの国の女性達に被害はない。何でも訪ねて来た女性の姉の夫のお父さんが舌癌にかかっていて手術できないと言われているらしい。場所が悪いのか手遅れなのかしらないが、これまたいつものケースだ。そもそも舌癌を薬で治そうという無謀な行為だが、高額なまがいものにだまされるわけには行かない。今回もまた、丁寧に説明してきっぱり頭の中から消してもらった。だだ、その時の悲しそうなまなざしが目に焼きついてしまって、夢でも買わせて上げればよかったのかと一瞬後悔した。
 同じ日本人同士でもこの認識の差を埋めるのは難しいが、後進国の人とならなおさらだ。出来ればこの内容の話はしたくないと思うが、いつも何処からか怪しげな情報を拾ってくる。