外野

 この手のことは苦手だ。そもそも判断する知識も持ち合わせていないし、元々拘るタイプではないから。ただ、よくあることだがやたら外野がうるさい。それも突然降って沸いたような外野が。
 神主さんが、今年も春祭りの御接待を宜しくお願いしますと言いに来られた。数年前から春と秋の祭りに駐車場にお酒や食べ物を用意しておみこしを担ぐ人やだんじりを引っ張る人を接待する。昔はよほどの旧家でないと出来なかったが、今はよほどのお人よしでないと出来ない。家柄が問われなくなったから、暇そうな、そしてやたら駐車場が広い我が家が候補に上がった。お断りする理由は全くないから、二つ返事で引き受けて、二つ返事で家族やかの国の人たちに丸投げした。
 ただ今年は、母を暮れに亡くしているから、御接待をすることは辞退すべきだという助言を数人から貰った。何か不幸な出来事があったら、ヤマト薬局のせいだと言われるのだそうだ。家族を亡くしたのに神様の御接待をすることは縁起が悪いということなのだろう。勿論このことをわざわざ言ってくるような人はいない。そうした風習があるということを耳にしたから、詳しそうな人数人に尋ねてみたのだ。面白いことに、僕より若い人は誰も拘らなかった。
 神主さんは「49日があければ問題ないです。まして大和さんのように大往生の方の場合は、家族の方も哀しみに打ちひしがれているというようなことはないですから、残された家族はこんなに幸せに過ごしていると見せてあげるほうがお母様も喜ばれるのではないですか?それと神様がどうして人々に祟るのですか。人々を幸せに導く存在なのに」と言われた。妻とその言葉を聞いていて「説得力がありますね」と思わず言ってしまった。
 実際に全てを取り仕切る妻がその言葉を聞いてどう判断するのか分からないが、僕は今年もまたお役に立ちたいと思った。祟りだなどと言うことを信じない僕が取れる唯一の道だ。