普通

 昨日の夕方、どうしても岡山に行かなければならなかった。出発時間20分前くらいに東京の方から電話で漢方相談を受けた。20分前だから相談は完結すると思ったので、いつものように相談者の主訴や周辺症状を聞いていた。出かける前5分くらいにほぼ処方は決まった。ただ、出かける用意をほとんどしていなかったので、漢方薬の送り先などは僕でなくても教えてもらえば分かることだから妻と替わった。急いで身支度を整えーこれはたいしたことではない。白衣を脱いで運動靴に履き替えるだけだー車で飛び出した。車を運転して1分もするとあまりの寒さに気がついた。確かに冬並の気温と天気予報は言っていたが、さっきまで暖かい薬局で仕事をしていたから寒さなど微塵も感じていなかった。Tシャツの上にチョッキを着ただけで車の中でも寒かった。ただ引き返す時間はなかったので、そのまま意を決して運転を続けた。
 ただこれが今日の話題ではない。どさくさしながら出て行ったのだが、電話を替わった妻に、その東京の方が「疑ってすみませんでした。普通の薬局だったのですね」と言ったらしい。今朝、妻が教えてくれた。普通の薬局が何を指すのか分からないが、正に僕が目指しているのはこの普通の薬局なのだ。現代医療の恩恵から零れ落ちた人、健康食品と言う名の不健康食品にだまされている人、ドラッグストアで無駄な出費をする人たちに少なくとも全うな手伝いが出来る薬局だ。この3つが解決出来れば現代人はよりまともに暮らすことが出来る。鬼業家を儲けさせる必要はない。彼らの欲望のために金と身体をささげる必要はない。
 普通の薬局がどんどん潰れている。OTCも処方箋調剤も漢方薬も、何でもやり、どこの病院の下請けもしない。自由でいられるポジションをとるのはいいが、経営的にはやはり難しく、滅多に目にしなくなった。患者さんのために自由に何でも言えるポジションはとても価値があると思うのだが、多くの同業者はそれを選択しない。まるで今の政治みたいなことがこの業界でも起こっている。偶然僕は田舎で孤立したようなところで薬局をしていたから、右に倣う必要はなかった。牛窓に帰って来たときからまるで変わらない気持ちで仕事が出来る。変化に乗り遅れて倒産したでは面白くない。変化に乗り遅れて生き延びた薬局にしたい。

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