意味

 車で1時間くらいかけて訪ねて来てくれる若いお母さん。来れば色々な話をする。もう敷居は無いから向こうも僕も自由に話をする。そういった自然な会話が処方を自ずと誘導してくれるから、改まる必要は無い。
 何の話からか、現代の歯の治療に話題が飛んだ。彼女自身も驚いていたが、僕などもっと驚いたことがある。それは彼女の友人がかかっている歯医者さんでは、歯を1時間かかって作ってくれるというのだ。この表現は正しくないな。もっと感謝の気持ちが出なければならない。1時間あれば型を取って歯が出来上がるのだそうだ。口の中を機械が回ればピッタリ合う歯ができるのだそうだ。その表現から僕は3Dではないのと珍しく機械のことで知ったかぶりをした。最も苦手としている分野なのに珍しく単語がすんなりと口から出てきた。すると彼女もそうかもしれないというようなことを言っていたが、確信は持てないらしい。
 教えてくれた友人は「1時間もあれば型(かた)が出来る」と自慢げだったらしいが、僕たちの話を聞いていた岡山市の男性が「ワシらの近所の歯医者の先生は、もっとすごいぞ。1時間で片がつく」
 げに恐ろしや。同じ「カタ」なのにこんなに意味が違う。