笑い

 専門用語がよく分からないから正しくは書けない。ただ聞いていて首をひねったから記憶している間に書いておきたい。
 家族の世話をしなければならないその男性自身が、もう世話をしてもらってもいい年齢だ。80歳を十分すぎていると思う。杖をつきながら入ってくるレベルなのに、家で家族の食事も作っている。内科でも薬をもらっているが、体力は病院の薬ではつかないので僕の薬局にもよくやってくる。家族の症状が最近とみに悪化してきたから、気も休まらない。体力だけでなく気力もかなり落ちてきた。それを見かねたヘルパーの方が、介護施設を紹介してくれた。家族の世話のストレスをもろ受けて、その男性こそが心を病みそうになったからだ。1日数時間でも家族の世話から解放させたいという狙いだろう。僕はいいことだと思う。自分が世話をしなければならないという義務感がとても強い方で、それが災いして自分を痛め付けている。昭和初期の男性の不器用さがよく現れている。
 今日元気薬をとりに来た時に色々話をした。そして施設のことにも話が及んで、利用料金について教えてくれた。家族の世話によるストレスから隔離してもらえるために入った施設は、部屋にテレビもなく、ただ壁を見ているだけらしい。横になって休むことは出来るが、本当に解放されることは無いと言っていた。料金は確か5000円くらいと言っていたと思うが、例えば1時間居ても、5時間居ても同じらしい。極端に言えば、1日10分の利用だでも5000円らしい。
 こうした制度について詳しくないから、何の名目で支払うお金かしらないが、ただ横になったり壁を見ているだけで何千円では馬鹿らしい。「僕だったら御主人500円で部屋に居させてあげるよ!」と言うような冗談も言ってみたくなる。勿論僕はそう言ったが、男性は「先生とこ(所)のこの栄養剤を1日4本飲めるからそうした方が得じゃあ!」と言ったが、僕もそう思う。社会福祉と言う名の商売が横行し、人の絆は切れる。笑いが止まらない人が、人様の笑いを止める。