放置自転車

 大晦日が日曜日だったため、僕には珍しい4連休だ。数日前からこの日曜日にやるべきことを決めていた。普段の業務ではなかなかその気になれない雑多な薬局業務だ。ところが朝起きてから集中的に取り組んだら2時間くらいですんでしまった。そのせいでその後の時間何もすることがなくなってしまった。そのつらさは想像以上だった。何もすることがないことに慣れていないから、時間のもてあましようが半端ない。専門の雑誌に目を通して3冊読みきることが出来たが、集中力はもうそれ以上続かない。正月の2日に神戸にかの国の女性を9人連れて行くから体力温存にも今日をとっていたのだが、なんだか余計疲れて今栄養剤を飲んだ。昨日までの疲れが出たとは思えない。昨日より疲れたというほうが的を射ているよいうに思う。緊張感がないと言うことは、こんなに空虚で疲れるものなのだろうか。僕にはこんな過ごし方は向いていない。別に体力があるわけではないが、40年続けてきた生活習慣は、それなりに僕の健康を保っていたのだろう。平日は一所懸命働き、日曜日は勉強会かかの国の人たちの接待。それで体力も気力も充実していた。根っからの貧乏性ではない。気力が充実して生き急ぐタイプでもない。ほとんど標準に近いのに、休み慣れていないことだけは確かだ。
 胃と大腸の内視鏡検査を受けに行った時、ベテラン看護師さんが「男性は今日みたいにゆっくり休むことが苦手な人が多いです。検査の日でもイライラしています。1年に1度くらい御自分の身体のために仕事から離れてもいいのではないですか」と言った。まるで一般論のような表現を使っていたが、恐らく僕を見てそう助言してくれたのだと思う。
 色あせた日常に未練さえも色あせた。彩りを忘れた絵画のように、放置自転車の荷台で埃を被る。