迂回資金

 「ジェイゾロフトをやめたところ、少し落ち着きました・・・・・・・」何の皮肉かと思うが皮肉ではない。落ち込みを治そうとして、その薬を服用し余計落ち込み、1ヶ月くらい混乱された。もともと聡明な人だから、この種の薬など必要ないと思うのだが、この種の薬に期待するところが大きいのが現代だ。以前は、この種の薬は避けてきたのだが、最近は安易に飲むようになった。薬が進歩したのか、ハードルを低くすることに企業が成功したのか分からないが、隠れたヒット商品だ。どうしてこの種の薬が「今年ヒットした商品」などと言うランキングに入らないのか分からない。若干の後ろめたさはあるのだろうか。  医療と言う名で許されることがあるなら、痴呆の薬もそうだ。この数日BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)について、ある大学病院の脳神経内科の先生の文章を読んだ。薬剤師の学術雑誌に投稿されていたものだが、理解にとても役に立った。専門的な知識、特に症状についての知識を増やしていただいた。難しい内容を読み終えて、知識を増やして、さて、これで少しは対象者に対して貢献できると思っていたら、文章の最後の締めくくりの欄で、「食行動の異常や徘徊に対して有効性を示す薬剤の報告は少なく、薬物療法の根拠は乏しいのが現状である」と結論付けられていた。  安易に薬に頼るというか、薬に逃げるのは恐らく豊かな国に蔓延している行動だと思うが、薬を提供する側の宣伝や、それに加担する疫人の思惑に乗らないほうがいい。税金と言う名の迂回資金が彼らに流れていく。僕達が懸命に働いて得た金が流れていく。