通訳

 日本人なら「大阪のおばちゃんか!」の一言でわかるのだが、果たしてかの国に同じ意味の言葉を婉曲に言う言葉が存在するのかどうか分からない。だからより分かる様に「図々しいなあ!」と言った。当然来日してまだ1ヶ月の人たちだから意味を理解できない。ただ僕が噴出すように言ったから、後で説明する自分達の冗談が通じたものと思っていたらしい。帰り道もとても楽しかったから。  全く日本語ができない3人とほんの少しできる1人の4人を乗せて総社に行った。その中の3人は先週、丸亀高松コースを案内した人たちだ。夕方フェリーで玉野まで帰ってから、眠気を防ぐために持参していたドリンク剤を飲んだ。ドリンク剤と言うのはかの国の人にとっては得体の知れないもののように見えるのか、誰もが怪訝な表情をする。好奇心の強い3人だからキャップに少しずつ汲んで飲ませてあげた。すると怪しげなものと言う誤解は取れたみたいだった。その後俄然、僕が牛窓まで元気に運転して帰ったのを見ていたのだろう、総社から帰り始めた頃に3人がやたら僕にドリンク剤を飲むように勧めた。ドリンク剤をしまってあるケースを指差して飲むふりをするから言葉は分からなくても気持ちは伝わってくる。気をつかってくれることは有り難かったが、コンサート会場で2時間半も和太鼓を楽しませてもらったので疲れは取れていた。何度も同じ動作をして僕に勧めてくれたが、僕は元気ポーズをして必要ないと言った。すると少しだけ日本語が分かる女性が「オトウサン ミンナ オカヤマイキタイ」と通訳した。そこで初めて、彼女達の優しい?意図が分かった。夕方の5時前で、もう暗くなり始めていたから僕は帰路を急いでいたが、彼女たちはまだ遊びたかったのだ。通訳してくれたのを境に3人が今度は何回も「オカヤマ」「イオン」を連発し始めた。  心からおかしかった。なんていうユーモア?だろう。かの国の女性たちで今までこのようにぐいぐい押してくる人達を知らない。遠慮気味なところに惹かれてきたのに、まるで正反対だ。結婚して子供もいる女性たちばかりだったから、その上3ヶ月で帰る人達ばかりだから、またまたその上、僕と既に2回行動をともにして日本の魅力に実際触れてしまったから、大阪のオバちゃん丸出し状態になったのだ。ただ彼女達の運のいいことに、僕は大阪のオバちゃんが嫌いでない。親近感が一気に湧いて来た。  第2寮に帰ってきてから、今日のこのエピソードを通訳に話した。すると通訳が3人に何か言ったかと思うと3人の表情が急に曇った。お父さんは今日楽しかったですかと、通訳を介して質問してきた。何を今更と不思議だったが、それ以上は気に留めなかった。  その後第1寮に帰って同じことを報告すると、日本語検定試験の1級に合格寸前の通訳が「オトウサンが怒っていると心配してるよ」と教えてくれた。第2寮の通訳が図々しいを怒っていると訳したらしい。第2寮の通訳は3級だから、僕の冗談が理解できなかったらしい。まあ、何はともあれ、全く分からない言葉で僕を噴出させてくれたことには感謝だ。笑いほど自律神経を整えてくれるものはないから。

この場を借りて・・・12月13日は人間ドックに行きます。当日は不在のため漢方相談は出来ません。御配慮ください。