遠志

日本医師会は会見で、厚生労働省が連絡した「オンジ製剤の広告等における取り扱い」に触れ、同製剤は認知症の予防や治療に用いるものではないことを改めて強調した。厚労省は「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて」を発出し、オンジ単味製剤の効能効果を「中年期以降の物忘れ」とした。このガイダンスを受け、各製薬会社はオンジ製剤を「物忘れ改善薬」として次々と発売。クラシエ製薬の「アレデル顆粒」、小林製薬の「ワスノン」、ロート製薬の「キオグッド顆粒」などだ。こうした薬の広告を見て、患者が医師に「この薬を飲めば認知症が治るのか」と尋ねるなど、混乱が生じていたという。  この状況を受け、厚労省は主に以下の項目について注意喚起した。 (1)オンジ製剤の効能効果は「中年期以降の物忘れ」で、認知症の予防や治療に関する効果は認められていない (2)「脳機能の活性化」、「脳神経細胞の増加や再生」、「脳全体が活性化する」、「既に忘れてしまった記憶をよみがえらせる」など、効能   効果が承認された範囲を超えると暗示させる広告表現は、厳に慎む (3)認知症の治療または予防に用いる医薬品ではない旨の記載または標榜を必ず行う 日医副会長の中川俊男氏は会見で、厚労省の事務連絡の概要を説明し、特に(3)の項目が重要と指摘。しかし「厚労省の指導後も、各社のホームページなどを見ると、懸念される表現が残っている」とし、引き続き状況を注視するとともに、改善の必要があれば適宜、厚労省に指導を求める姿勢を明らかにした。

 いつの頃だっただろうか、僕のところにも製薬会社のセールスが「遠志」を持ってきた。顆粒で飲み安く出来ていたが、何に使うのか判らなかった。するとセールスが物忘れとか認知症に使うと言っていた。僕も時々遠志が含まれている煎じ薬を作るが、物忘れのために入れるのでもないし、まして認知症の為にも入れない。僕が作るのは、1人思い悩んで出口が見つけられずに心身ともに弱った状態に使う。だから体も心も弱っていなければ使わない。漢方薬は、基本的には何種類かの薬草を組み合わせ、目的の処方を作る。ひとつの薬草を飲んだりすることは滅多にない。  「遠志」をもし分けて下さいと言ってきたら1日分20円ほどいただくことになるが、小林製薬の「ワスノン」、ロート製薬の「キオグッド顆粒」などはこんな値段ではない。もっとも箱代、瓶代、運送費、人件費などが生薬の値段に加えられるから1日分が100円以上するのだろう。煎じ薬の半分くらいしか効果はないと思うが、果たしてそんな「遠志」なるものが効くのか。  大企業の不正が昨今華々しく報道されるが、遠志のように法律的にぎりぎりのところで勝負する商品も多い。上記の製薬会社などはその代表かもしれない。いつからこんなにテレビで誇大宣伝が許されるようになったのだろうと思うが、きっと疫人の天下りを沢山受け入れているのだろう。その時々の、一人ひとりの小さな欲望が、大きな汚い川の流れを作る。清流にしか住めない魚は行き場を失いさまよっている。