個性

 今日ある女性と話していて、面白い個性に気がついた。指摘されて気がついたのか、自身も大笑いをしていた。身体を折るようにして笑えることは幸せだ。この笑いが一日何回かあれば病気など治ってしまうのだろうが、なかなかそんな環境に居続けることは出来ない。多くの人が、とんがった空気の中で何とか暮らしているのが現実だ。  漢方薬を遠くからとりに来るくらいだから、完璧な体調とはとても言えない。それなのに彼女は二日連続でお昼休みに岡山駅傍のイオンまで行って来たそうだ。彼女の職場からそんなに近いかなと思ったので尋ねてみると30分から40分かかるらしい。と言うことは昼休みが2時間らしいから、用事はあっと言う間に済ましたに違いない。案の定そのことは自分の口でも言っていた。なんでもどうしても欲しいものがあり、それが最後の1つだったらしいのだ。そしてその後もそれが入荷する予定はないらしい。次の日に同じように2時間でとんぼ返りした理由も「最後のひとつ」の商品を手に入れるためだったらしい。僕はその話を聞いていて思った。彼女は「最後のひとつ」と言う言葉に弱いのだと。それを言うと自分でも認識したのか身体を折りながら笑った。  昼食をとるために僕が2階に上がるのはみんなが食べ終わってからだから遅い。その頃のテレビと来たら、通信販売の手先かと思うようなくだらないものが多い。そしてそこで飛び交う殺し文句が「限定何個」とか、「締め切りは何時まで」とか如何にも品薄のような言葉を並べて、考える時間を作らせないように追い込む。ちょっと冷静になれば必要ないもの、誇大広告などと見破ることが出来るのに、せかされると判断力を失うのだ。なかなか練られた手法で昔なら通用しただろうがさすがに今は・・・と思っていたら、若い彼女が正にそのタイプだった。  僕は彼女にとって漢方薬局のおじさんだが、彼女の応援者でもある。長い付き合いだから彼女をよく知っている。そういった患者さんが僕には一杯居る。「最後のひとつに」めっぽう弱い彼女の個性もまた僕にはまぶしい。いろいろなことを経験しながら、それでも懸命に生きていく、そうした人たちで社会は成り立っている。そうした人たちの為に政治は機能しているか。「生かさず殺さず」で来た戦後から「生かさず」に変りつつあることに、真っ先にその対象者になりそうな人たちは気がついているか。

https://www.youtube.com/watch?v=HB86D-xajyI