農家

 たぶんお互いは知らないだろうが、今日二人の方から同じ内容の感謝の言葉を頂いた。  牛窓町岡山市と隣接しているから、結構岡山市からの患者さんが多い。牛窓は田舎だから、接している岡山市もまた田舎の部分で、中心地とは名前だけ一緒で、あえて岡山市を名乗るほどのところではない。一帯は広い田んぼが広がっていて、今でもほとんどの田んぼがあらされていなくて稲がたわわに実る。だからその辺りでは、結構広い田んぼの所有者がいて、専業で農家をやっている人もいる。今日の2人も正に専業の農家だ。  いみじくも2人が礼を言ってくれたのは、無事に稲刈りが出来たことに対するお礼だ。1人は頚椎を患い重い物を持つことが出来ない。1人は脊柱管狭窄症で田んぼの中を歩きまわることができない。その2人が別々だったが漢方薬をとりに来て無事収穫作業が終わったと報告してくれた。農業だからどうしても重い物を持たざるを得ないが、1人は首にこたえる事がなかったこと、もう1人はコンバインに乗ると腰に負担がかかるから乗れないと思っていたが、何の心配もなく乗れたことなどを教えてくれた。2人とも僕より少し上の人、いや、農家の方は紫外線の影響で少し老けて見えるからひょっとしたら僕より若いかもしれないが、いずれにせよ、農業の従事者としては若い方に属するかもしれない。と言うことは、もっともっと深刻な体のハンディーと戦いながら農業に従事している人がほとんどだってことだ。それはそうだろう、まだまだ機械化されていない頃から農作業をしている人だから肉体の酷使のほどは尋常ではない。  田舎に暮らしていると、僕らが口にする物を作ってくれる人たちの姿が見える。遠景ではなく全人的な存在として見ることが出来る。だから僕達は感謝することが出来る。おかげとか、おかげさまと言う言葉が自然に使える。決して派手ではなく、どちらかと言うと人間が苦手な人が多く、口下手ぞろいだが、信頼できる。土と触れ合う人たちだから悪意がない。悪意などが役に立つ場面がないからかもしれない。自然には自然な態度でしか向き合えない。それが身についている人たちだ。鎧を着ていない無防備な人たちだ。そうした人たちと共に暮らせる町に感謝だ。

https://www.youtube.com/watch?v=1Dg_f_fP5Ws