大変

 昨日、息子の家族が母を見舞ってくれたらしい。見舞ってくれたのは、いつからだろう。1年?2年ぶり?それとも・・・。  さすがに母の容態が不安定化し始めたからその気になったのかもしれないが、孫なんてのはこんなものなのだろう。多くを期待しても無駄だし、言えば嫌われるから黙っている。  ところがその報告を聞いていて、思わず涙腺が緩んでしまった。勿論僕に報告ではなく妻に報告しているのを薬を作りながら聞いていただけだ。母は、最近何度訪ねても寝ているばかりだった。眠っているなら起こしてはいけないと思い数回耳元で大きな声で呼びかけるだけにしているが、それに答えてもらった記憶はこの数回ない。傍らで暫く様子を見たり本を読んだりして過ごすだけだ。ところが昨日は、息子の呼びかけに返事をしたり笑ったりしたらしい。本当はわかっているのに、姥捨てをした僕を許さないためかなどと一瞬考えたが、勿論そんなことをする母ではない。善良そのもので生きてきた人だから、痴呆状態になっても品は保っている。何年ぶりに訪ねた孫がわかったのだろうかと言う反応に嬉しくなった。そして、ひ孫が「おばあちゃん、がんばって」と言ったそうだ。日本語が苦手な孫がそんなことが言えるようになったのかと、これもまた僕には喜びだった。そんなことが一瞬にして僕の涙腺を緩ませた。  最近、口の苦さが増してきている。僕は自分の精神状態を口の苦さで知ることが出来る。過去何度か経験したことだ。初めて借金をしたときにこれは何だと言うくらい不可思議で不快な期間が続いたことを覚えている。その後はストレスと口の苦さの果関係がわかったからあわてなくなって、気持ちが落ち着くまで待つ。それにしてもこの歳になって体に不調が現れるほどのストレスを抱えてしまうとは、いつまでも生きるって大変なんだと思い知らされる。