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 正に現代病と呼べるもの、また先進国病とも呼べるものだ。  理由はわからないが多くの人が相談してくれる。効果を出すことはそんなに難しくないが、完治となると確率はぐっと下がる。それでも楽になってもらえれば、生活の質が随分と上がって喜んでもらえる。できないことが多く、大切なものでも避けながら暮らすとなると失うものは計り知れない。  長年過敏性腸症候群で苦しんでいる方に今日は勇気が出る話をしたい。  午前中に電話で漢方薬を注文してくれた女性が、体調の話をした後に「実は・・・」と切り出した。改まった言い方を急に始めたので何かと思ったらその後に「就職が決まった」と言った。元々働いている女性だからピンと来なかったが、講師と言う肩書きだったらしい。よくわからないが、常時大学にいるのではなく、授業のときだけ大学に出かけるという意味だと思う。卑近な言い方をしたら正社員でないということか。そんな状況から何とある大学の正式な先生になったのだ。それも医科大学の先生だ。ある才能(本人は恐らくそんなこと微塵も思っていないが、その分野に疎い僕からしたら才能そのものだ)をもった方でその知識を医学生に教えるらしい。何年も腹鳴りで才能を全開できなかった人が何とい医大の先生になる。  僕は今まで、普通なら傍に寄れない様な肩書きの人に漢方薬を作ったことは何度かあるが、普通の社会人に漢方薬を作っていて、その人が近寄りがたい肩書きを持つようになった経験はあまりない。ひとり中学高校と漢方薬を飲んでもらっていた子が東大の医者になったが、そのケースはあくまで子供の時だ。成人した人がお腹の鳴りなどで生活の質を落としていたところから、医科大学の先生になれたのだから、今僕の漢方薬を飲んでいる人も是非後に続いて欲しい。敗者復活戦は、努力を続けながらチャンスをうかがっていればありうるのだ。苦労した分手にした肩書きに厚みも増すに違いない。  僕はその女性にかの国の人たちと一緒に会ったことがある。少し僕の姉に似ていて知性が人格を邪魔したりしないような優しげな表情の人だった。そっと寄り添ってかの国の女性達を案内してくれた普通の人が、晴れて大学の先生になった。最近知ったZARDの「負けないで・・・」と言うフレーズが何度も頭の中で再生された。僕と縁が生まれた多くの悩める人たちとこの朗報を共有したかった。病気でもない病気に「負けないで」と。