授業

 まさかこんな答えが返ってくるとは思わなかった。子供と言っても下手な大人より考えが深い子もいる。  今日小学6年生を対象にタバコの害について授業をしてきた。去年に引き続いてだから要領は得ているのだが、生徒は違うものの担任の先生と傍聴する養護の先生は昨年と同じだから、内容を変えた。数日を要して原稿?メモ?を作った。  最初に生徒達に投げかける言葉を用意していた。それは「世の中で一番恐ろしいものは何?」と言うものだった。僕は授業は基本的には全員参加が望ましいと思っているから公平な発言の機会を与える。案の定質問を出すと利発そうな子達が競って手を上げるが、そうでない子を引き上げて楽しい1時間にしたい。これも薬剤師と言う職業が作り上げる個性かもしれないが、みんなが笑って授業を少しばかりの知識とともに終えてくれれば幸いだ。  20人近くいる生徒全員がそれぞれの怖いものを教えてくれたが、表現の違いはあるものの、病気、戦争を含む犯罪、自然の脅威に大きく分類される。幽霊と言うのもあったが、これはユニークでその3つの中には入れれない。タバコの授業でこんな質問を用意したのはある目的があってのことだ。実はタバコの中には4000種類の物質が含まれていて、その中で致死性物質は200種類、発がん物質は60種類といわれている。もしその260種類の物質を皿の上に盛ったら誰も手を伸ばさないだろう。しかし、煙の中に見えない状態で閉じ込められたら誰も恐れを感じない。人は見えないものに対しては恐れることすら出来ないのだ。逆に怖いから見ることを拒むこともあっるが、見えないままにしておくほうをとることが多い。そのことを最初の質問で誘導したかったのだ。狙い通り、前者の見えるものと、後者の見えない幽霊に分類できた。  実は一人の女生徒が見えるものと見えないものの両方に属するものを上げてくれた。それは「人」だ。この質問を考えたときに正に僕はその答えを自分で出していた。その答えを10歳を少し回っただけの女の子が出してくれた。どんな体験をしてその答えを出したのか、どんな本を読んでその答えを出したのかその場で聞くことはできないから背景はわからないが、大人の回答だ。僕が感心して褒めると後ろで立って聞いていた担任の先生が「さすが〇〇さん」と言った。恐らく優秀な子なのだろう。一見、田舎の子らしくて見るからに何か光るものを持っているようには見えなかったが、先生も認める才能を備えているのかもしれない。「将来小説家になって有名になったら、おじちゃんにサイン頂戴ね」と言っておいた。  見るからに悪人面した悪人なら人は避けることが出来るが、見た目が優しくて内実は悪の塊のような人種が一番怖い。中まで見ることが出来ないからだ。致死性物質を心の中に一杯隠している人間は結構沢山いるはずだ。こんな人間のよい例として次の人間達を上げたかったがさすがに今日は遠慮した。その遠慮した分をここで書く。痔見ん党、金平糖、異心の会、鬼望の灯。アホノミクスはこれらとはジャンル分けしなくてはいけない。アホノミクスは見るからに悪人面した悪人。  思いつくまま喋っていたら後3分と言われた。用意していたメモの半分も喋れていなかった。それはそうだろう、曲がりなりにも薬剤師だから、それも漢方薬を主に担当しているから、子供達のちょっとした反応も漢方的な解釈ができる。そうした話を即興で随所に取り込み過ぎた。  毎回学校行事に時間をとられるのは気が重いが、いったん決意して教室に入ると、田舎の純朴な子供達に接することが出来て楽しくて幸せな気分になる。この年齢になってみれば学校時代の成績などどうでもいいように思える。あのキラキラした目と屈託の無い笑いさえ失わなければそちらのほうが幸せかもしれない。そう教えられた一日だった。

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