喪失感

 まあ、何週遅れか分からないけれど感動したので1度書いておきたい。  毎日ブログを書いた後に、ユーチューブの面白い映像を一つだけ紹介しようと思っている。色々物色するが最近面白いのはアホノミクスの批判の替え歌だ。あの汚い人間性をとても旨く歌にして、どの道でも大した人がいるものだと感心している。昨日その汚い人間のことを探していたら、真逆のとても綺麗な映像に行き着いた。女性歌手が歌っているのだが、綺麗な顔立ちなのにどこか哀愁を帯びていて、時々虚空に目をやる。媚びた笑顔は封印しているのか、最後まで見られなかったのがとても印象的だった。  不覚にも名前を知らなかったが、野球の3塁みたいな名前は聞いたことがあった。ただそれが個人をさす名前だとは知らなかった。ほとんど知らなかったと言ってもいいくらいな歌手なのだが、ある曲のさびの部分だけは記憶にある。少し金属音が混ざるような独特の声で「負けないで・・・」と言うところだ。どの世代に受け入れられたのかしらないが、多くの人を励ましたに違いない。  動画の中で意味がわからなかったことがある。その歌手が巨大なスクリーンの中で歌っているのだが、最後までスクリーンから出てこなかった。楽団は舞台の上でノリノリで演奏しているのだが、バックコーラスの女性もノリノリで歌いながら踊っているのだが、歌手は結局スクリーンから登場しなかった。ただ大きな会場からは割れんばかりの拍手が続いていた。  それは感動的な映像だったが、何となく違和感があった。そしてあることを思い出した。女性歌手が転落して亡くなったニュースを。そこからようやくこのコンサートの違和感、コンサートの観衆の喜びよう、演奏のメンバーのノリノリの意味がわかった。この女性歌手は亡くなっているのだ。そしてその追悼コンサートで映像に合わせて生の音楽を舞台で奏でていたのだ。生前を偲びペンライトを振りながら、生きているときと同じように聴衆も演じたのだ。  その後興味があって、インターネットでその歌手のことを調べてみた。どうやらすごい人気の歌手でマスコミへの露出が少なかったらしい。営業上か素質がそうなのと分からないが、後でわかった闘病の内容などからアホコミへの露出が好きでなかったのかもしれない。神秘と言う言葉より孤独があたっているかもしれない。  クールな美しさを病魔が次々と襲っていたらしい。漢方をやっている僕ならかなり防ぐことが出来る病気ばかりだ。どうして僕のホームページまで行き着かなかったのかと悔やまれるが、こんな田舎の薬局をスタッフが信じるわけがない。あの歌手ならひょっとしたらと思うが、それもありえないか。  僕は何度も再生してその映像を見た。歌まで覚えてしまいそうだ。1度見ただけでこんなに釘付けになるのだから、元からのファンの喪失感は半端ではなかったのではないか。悔やまれて悔やまれて仕方なかったのではないか。それが証拠に、寄せられているメッセージの切なさが伝わりすぎるくらい伝わってくる。なかなかこうした品の良いメッセージばかりと言うのは少ないから、よほどその歌手が惜しまれて亡くなったのだろう。生きていたら・・・と月並みなことを考えてしまう。美しいままで亡くなったがそれが本人の望みどおりかどうか。沢山の聴衆の中でさえ孤独だったのかと尋ねてみたいスクリーンの中の彼女だった。

https://www.youtube.com/watch?v=p9_3n7mTYkw