プラネタリウム

 始まって数分しないうちに失敗を確信した。と言っても少しだけ遅刻したので全くの最初からではなかったのだが。だが、その遅刻で面白い経験も出来た。まずはそちらの話から入っていく。  3ヶ月の短期間の研修生達に何とか思い出を作ってあげたくて、インターネットで毎日のように情報を集めているが、僕の得意分野のイベントがあまりない。諦めずに探しているうちに見つけたのが倉敷のプラネタリウムだ。プラネタリウムは僕が子供の時に行っただけで、頭上に星空が広がっている光景しか覚えていない。ただしそれはかなりきれいと言う印象で、倉敷にプラネタリウムがあることを見つけただけで楽しくなった。  倉敷科学館に着いたのはまだ余裕がある時間だったのだが、隣の運動公園と共同のイベントのために駐車場が混雑していて、数分遅れた。遅れても入れてくれるのだが、まるで潜水艦に入っていくように、1度小さな空間に入り、入り口の光を完全に遮断してからプラネタリウムの中に入る。いわば完全に外部の光を遮断するのだ。そのために係員が誘導してくれるのだが、係員のペンライトがまことに心もとない。ペンライトで足元を照らしてくれているのだが、ペンライトの明かりは見えるが、肝心のそれが照らすものが見えない。まるで手探りだ。案の定、先頭を行っていた僕は階段の横で頭を打った。普通の生活をしていて頭を打つなどと言うことは滅多にあることではないから、結構痛かった。相手がコンクリートだからそれは痛いだろう。何度も人生で頭を打つことはあったが、今回のはその比ではなかった。思わず僕の目がペンライトになりそうだった。  プラネタリウムは僕の記憶とは大違いで、ほとんど勉強と言う印象だった。星達を眺めて気持ちを落ち着かせるというような情緒的なものではなく、古代ギリシャの神々など多くの星座の名前が出てきて、頭上にいくつもの絵が出てくる。古代の人の想像力は分かるけれど、大いに無理があるのではないかと茶々を入れたくなるくらい難しかった。だから絵は邪魔!なんて思ってしまうから、そもそもプラネタリウムを見る資格がないのかもしれない。結果的には半分くらいの時間は眠っていたと思う。  と言うわけで僕にとっては思い出の破壊でしかなかったのだが、かの国の人達には結構受けた。そもそもプラネタリウムと言う言葉さえ知らなかったのだから、行く前からかなり興味を持っていたようだった。そして遅れたゆえの暗黒の歩みもスリリングだったのだろう。そしてこれは妻の解説だが、彼女達は言葉が分からないから、純粋に視覚だけで楽しめた?結構説得力のある推理だ。案の定帰ってきてから通訳を介して印象を聞いたら4人とも楽しかったみたいで、そのやり取りを聞いていたかの国の女性が何人か是非行きたいと言っていた。  僕にとってこの結果はひょうたんから駒だ。全敗かと思っていたので。おまけに入場料が410円で安い。410円で50分も楽しんでもらえる。そして僕は年齢規定により無料だった。受付で無料だと言われて、うれしいような、うれしいような。

https://www.youtube.com/watch?v=TtRz6trhiGw