確率

 どう考えても、相談されているトラブルの原因は他にはない。ただ、現代には珍しい善意のおせっかい焼き屋さんは、それはないと言う。ないと言われたら仕方ないから、その唯一の前提をないものとして漢方薬を作る・・・なんてことはしない。強情でも自信過剰でもない。田舎で処方箋に依存しないでごく普通の薬局が生き残ったのは、ただひたすら薬が効くことを願って勉強してきたからだ。薬と言うものはしばしば僕は引用するが、買ってもらったテレビが必ず映るのとは違って、効かない可能性も高い。いわば可能性にお金を使ってもらうのだ。だから僕はその可能性を少しでも高めたかった。そうしないとお金をいただくことに後ろめたさが付きまとう。そんなことは僕はしたくなかった。だから、常によく効く薬を求めて先人に教えを乞い、実践し確かめた。  と言う長い理由から、僕は自分の経験を優先して「必ず大量の水分を摂っている」人の漢方薬を作った。おせっかい焼き屋さんは、そんなに摂る人ではないと言ったが、それではその相談の症状が起こりえない。  単なるおせっかいだから漢方薬を本人が飲むかどうか分からない。だから3日分持って帰ったが、職場に着いた頃電話がかかってきて、実は朝2リットルの冷たい水を買い、1日で飲んでしまうと教えてくれた。本人に確認したのか思い出したのか分からないが、僕の前提条件に合致する。病気にも必ず理由がある。それを取り除かなければ、いたちごっこにもぐらたたきだ。僕はどちらも好きではなく、自分が病気になったら根本的に治りたい。そしてその不調とバイバイしたい。この年齢になっても同じだ。まだ不調と同居はしたくない。  と言う理由で、僕の独断で作った漢方薬が正しかったということになる。となると効果も出やすい。その後どうなったか分からないが、せめてこれだけの裏づけがあれば、効かなかったときの僕自身の落ち込みのレベルが違ってくる。このように情報を信用できないときは、自分の判断を優先したほうがいいこともある。安易に妥協せずに、効く確率を追及したほうが患者さんのためになる。  若い薬剤師には難しいかもしれないが、いたずらに迎合しないのはこちらの精神状態にもいい。仕事が楽しくないと効く確率は上がらない。全てがこのためだ。