二刀流

 ついに二刀流開眼だ。これで大谷選手と並ぶ。  雨の日のモコの散歩は行くべきか行かないべきかで迷う。と言うのはモコはミニチュアダックスだから足が短く、地面の上はすぐ胴体だ。おまけに胴体が長いから自分がけった泥がお腹一杯につく。少しの時間出ていただけでもお腹はべとべとだ。とは言え、いくら犬でも自然の摂理には逆らえない。催してくるだろう。雨を察するとひたすら我慢したのは以前飼っていた雑種のクリだが、洋犬でもそれに近い根性は見せる。だから余計、朝の排泄のタイミングを奪うのは気が引ける。雨に濡れるのを嫌がるモコを外に連れて行き排泄を促すのがいいのか、家の中で便意を我慢しながら雨が上がるのを待たせるのがいいのか、本人(本犬)に聞いてみたい。  なるべく雨の日でも排泄させてやりたいので、少しくらいの雨なら傘を差して隣の駐車場に出る。モコを地面に置き自由に歩かせるのだが、モコの動きに傘を合わせるのは結構大変で、「どうして雨に濡れないのだろう?」などと考えもしない天真爛漫なモコの後を追う。当然僕の上には傘がなく、僕は雨に甘んじる。となるとさすが善意の塊のような僕でも戦意喪失する。だから責任のない雨にさえ当たるようになる。(雨に当たって、雨に当たる?)  思えば何年も同じことを繰り返していた。ところが今日ふとひらめいたのだ。モコと僕を別の傘にすればいいのではと。そこで2本の傘を用意して雨の中に出た。1本はモコの動きに合わせて低く構え、1本は僕専用で高く差す。「なんていうことでしょう(ビフォーアフター調に)」モコは天真爛漫を崩さす、僕は水も滴るなんとやらにならなくてすんだ。もし人がいたら、そして小さなモコが見えなかったりしたらなんと思われるだろう・・・てなことは考えない。我ながらしてやったりで、これから梅雨の時期を迎えても苦にならない。滅茶苦茶シンプルすぎて誰でもが思いつきそうで、しかし見たこともない。  本日、二刀流に開眼。