国に帰る貴女に

〇〇さんへ  お父さんは、多くの貴女の国の若者を見送りましたが、感謝のうちに見送るのは初めてかもしれません。貴女が、母(おばあちゃん)に示してくれた愛情は、僕の家族の誰よりも深く純粋でした。貴女の天真爛漫さは、傍にいてとても癒されたし感動的でした。どのように育てられたり、育てば、そういった性格になるのだろうと、いつも不思議に思っていました。それこそ天性のものなのでしょうか。  この国の3年間で、貴女が何を感じ、何を得たのか分かりませんが、牛窓と赤坂では会えるチャンスが少なくて歯がゆく思っていました。近ければもっともっと貴女には体験してもらいたいことがありました。物に囲まれ、人から逃れ、傷つけあい、とても生き辛い国に来た貴女には今のこの国はどのように見えたのでしょう。恐らく貴女方の国の数十年先を演じている姿は、綺麗だったでしょうか、感動的だったでしょうか、それともこっけいだったでしょうか、哀れだったでしょうか。  お父さんは、貴女がおばあちゃんに抱きつき頬ずりし溢れんばかりの笑顔で話し続けてくれたことを決して忘れません。今でも鮮明にあの時の光景が浮かんできます。恐らく遠くで暮らすようになっても折々に触れ貴女を思い出し感謝すると思います。貴女が何かのきっかけで日本に来、そして僕の前や母の前に現れてくれたことに感謝します。  これからも元気で幸せに暮らしてください。いつかまたお会いしましょう。貴女の国か僕の国で。                                                 日本のお父さんより