阿呆鳥

 それは度を越している。我が家みたいに毎朝2羽だったらかわいいのだけれど。  偶然だけど、車で30分くらいかかる街から昨日と今日、同じような皮膚病の相談で2人の女性、どちらも70歳代、がやって来た。2人とも訴えは「身体中が痒い」だった。ところがこの身体中を言葉の通り信じてはいけない。本人にとっては、痒みが強いせいで「身体中」になってしまうが、よく見てみると、昨日の女性は両腕、今日の女性は首と肩だった。それも昨日の女性は、発疹が3個、今日の女性も6個くらいだった。2人ともひどく心配して病院に行っているが、頂いた飲み薬も効かないと不安げだった。見せてもらうとどう見ても体の内部から出来ている湿疹の様には見えなかった。季節はまだ早めだが、ダニにやられたような痕だった。確かにまだ早いが、今の住宅はダニにとっては好都合な環境だから、この季節に被害にあっても不思議ではない。そこで何か寝具を変えた?と質問してみたが、そうしたことはしていないらしい。風呂にも入っているし、パジャマは数日で洗っているし。そこで今度は目を戸外に向けて「洗濯物を干しているあたりに雀が飛んでこない?」と尋ねてみた。すると今日相談に来た女性は「雀は飛んでこないけれど、ヒヨドリが50羽くらい毎日飛んでくる」と答えた。なんでも、家の前に菜園があり、そこに毎日ヒヨドリがキャベツを食べに来るのだそうだ。  我が家では何とか鳥を集めたいと思って、1週間前からキャベツを駐車場に置いている。すると毎朝ヒヨドリが2羽やってきて、キャベツをつつくようになった。キャベツに深い穴を開けている。近寄ればさすがに逃げるが、最近はかなり距離を詰めさせてくれる。ただ我が家は意図して集めているので「かわいい、かわいい」で済むが、さすがに50羽も集まれば被害が大きいだろう。おまけに恐らくそれが原因だと思うが鳥ダニも一杯洗濯物の上に落として行ってくれるだろう。  まるで野鳥の森と化した光景を見てみたいが、野菜を食べられる被害、鳥ダニによる被害と来れば共存は難しくなる。猪に鹿、共存を考えなければならない動物が増えている。この国では決して共存してはいけない阿呆鳥もいるが。