知性

 台湾の蔡英文総統は、どうやら日本のアホノミクスなどとは違って、かなり知的レベルが高そうだ。学んだ学校を見たら驚くばかりだ。台湾は勿論アメリカ、イギリスと、何処まで知性を積み上げれば満足かと思わせるほどの勉強欲だ。本人の能力もあるのだろうが、それを後押しできる家庭に恵まれていたみたいだ。事業家の親が、金儲けに価値観を見出しそれだけを子供に伝えるのとは大違いだ。  もともとの党是だったらしいが、ここで正式に脱原発に方向を切った。福島を見て原発をつくろうなんてのは、原爆を作りたい奴しか思わないだろう。政治経済を専門に研究してきた女性らしいが、国民を放射能で殺すような馬鹿な真似は当然避けるだろう。   ドイツのメルケル首相も同じだ。彼女は物理学者のような記憶があるが、少しでも悪意がなければ原発を進めたり出来ないだろう。知性か正義感か、どちらが原発を中止させる判断に影響したのかわからないが、アホノミクスとは次元が違う。  ところで台湾は今だ東日本からの輸入を制限している。ここで群馬、茨城、千葉、栃木からの輸入制限を緩和するかどうか図ったらしいが、結局は今までどおり制限をすることに決めた。  当然のことだ。これをもってけしからんなどと言う権利はない。逆の立場だったら日本でも同じことをする。今までアメリカの農薬ですら大問題にしてきたのだから、もっと危険なものに神経を尖らせるのが国の役割で、水際で防いでくれなければ国民が黙っていないだろう。事実台湾でも国民が黙っていなかったから今回の輸入制限の継続につながった。  翻ってこの国はどうだ。国は放射能から国民を守っているのか。口に入ったり触れたりするのを防いでくれているのか。いやいやむしろ、口に入れたり触れることを国策で推進している。放射能をよく食べ、放射能が堆積しているところに帰れと言っているのだ。この国は公害が起こると必ず企業を守る。何度も見せ付けられた光景だ。それを忘れた人たちは、それを知らない人達は、嘗て苦しんだ人と同じ運命を辿る。少しずつ、或いはある日急に体を蝕まれいつか必ず取り返しがつかないことになる。何度と無く見せられた光景がいずれやってくる。そして当然国は隠しごまかすが、これまた当然暴かれる。そしてこれ又当然国や役人は責任を免れる。命を落としたり体を蝕まれた人間だけが馬鹿を見る。だから僕達は、台湾人と同じレベルの警戒感を持って、この国では暮らさなければならないのだ。自分達に責任のないあんなことで苦しみたくない。僕達はモルモットではない。