警告

 新しいことわざがある。作者不詳ではなく、作者不肖で申し訳ない。今日出来たことわざだ。「去るものは追わず・・・だけど猿なるものは追う」  昨日配達に行っていた妻が、帰るや否や興奮気味にカメラを見せてくれた。妻は雲博士だからいつもカメラを車に積んでいる。地震雲を見つけるたびに見せてくれるが、最近は地震が頻繁に起きているから、ほぼ中る。  今回は雲の写真ではなかった。西脇海水浴場辺りに配達に行ったのだが、そこに行くために一つ峠を越えなければならない。ちょうどその峠を海水浴場の方向に下りかけたあたりの空き家の屋根に2匹の猿が登っていたそうだ。車を運転して見つけたのだから、カーブのところでその空き家が正面に見えたのだろう。妻は慌てて車を止め写真を撮ったのだが、さすがに猿には驚いたのか、少しピントがずれていたが、それは紛れもなく猿だった。  猪の後は鹿、この辺りまではなんとなく郷愁を誘われていたが、猿と来るとちょっと危険を意識した。テレビニュースで都会に猿が出て大捕り物をしているのが何度も放映されたせいか、危険な生き物と言う印象が先に来る。うかうかその辺りには出かけられないなと思う。もっとも猪の方が危険だが、こちらが敢えて彼らの領域に踏み込んでいく機会は無い。薬局があるところや僕の行動範囲にはいわゆる里山はない。だから恐らく遭遇はしないだろう。ただ猿は、屋根から屋根の世界だから何処にでも出没できる。より身近に来ることが予想される。  日本中で過疎化が進んで、人間の居住空間が狭くなるにしたがって、野生動物の安全地域が広がる。その視点からすると今はどのくらい時代を後戻りしたのだろうか。戦後?昭和初期?大正時代?明治時代?まさか江戸時代?面白いといえば面白い。物欲の鬼となり、ひたすら経済だけを追いかけて来たこの国の人と言う動物に、彼らが警告してくれているようにも映る。、