彼岸花

 布団をかけて寝ているはずなのに、寒くてしばしば目が覚めた。起き上がってもう一枚布団をかけることはしない。それよりは震えながら朝を待つタイプだ。朝着た服は日中寒くなろうが暑くなろうが決して着替えない。いつも妻に笑われる。こうと決めたら頑として変えない・・・そんな格好いいものではない、単に横着なのだ。  早朝のウォーキングも始めは寒かった。ただ、さすがに30分近く歩くと体は温もってきた。もっとも心は凍ったままだが、今日の朝の景色はそんな心までも温かくしてくれそうだった。まず朝焼けがきれいだった。東の空だけが灰色の雲を割るようにして、ピンクに染まっていた。  隣の広い駐車場まで帰ると、法面に彼岸花が存在を誇示して今は盛りに咲いていた。この時期他に咲く花が少ないのか一際目立つ。まるで1人勝ちかのようで、大きなアゲハチョウが蜜を吸って花から離れようとしない。その1人勝ちもどうやら孤高の花らしくて、色々と噂される。そもそも別名が彼岸花には多くて、その多くが不吉なものだ。  ここからはインターネットの押し売りだが、あまりにも面白くてためになったのでコピーする。彼岸花の別名には以下のようなものがあるらしいが、まあよくも名づけたものだ。「彼岸花を家に持ち帰ると火事になる」「彼岸花を摘むと死人がでる」「彼岸花を摘むと手が腐る」という3つの恐ろしい迷信があるためらしいが、えらい迷惑な話だ。  曼珠沙華(まんじゅしゃげ/かんじゅしゃか) 死人花(しびとばな)地獄花(じごくばな)幽霊花(ゆうれいばな)剃刀花(かみそりばな)狐花(きつねばな)捨子花(すてごばな)毒花(どくばな)痺れ花(しびればな)狐の松明(きつねのたいまつ)狐花(きつねばな)葉見ず花見ず(はみずはなみず)雷花(かみなりばな)  こうして列挙しているのを眺めていたらよく似たものを連想した。花を鼻に置き換えるだけでアホノミクスのことを言っているように思えた。