行動力

 5年前、かの国の女性2人を広島の原爆ドームに連れて行ったことがある。その中の1人が次女になったのだが、彼女がそこで言ったことをはっきりと覚えている。原爆ドームを見学した後に「ワタシ オネエサンツレテ ゼッタイモウイチドクル」  彼女にお姉さんがいることは知らなかった。妹がいることはわかっていたが初耳だった。一度実習生で来た人はなかなか再び日本にやってくることは出来ないことを知っていたので、実現不可能だろうと心の中では思っていた。その言葉を僕は哀れに思いながら聞いていたのか、とても印象深く、その言葉を発した場所さえ覚えている。  ある相談事で日曜日に1日中次女三女と行動をともにしたが、その時に1つの発見をした。専門学校とアルバイトで休みなく過ごしているから、いつか広島に連れて行ってあげると提案した。そして5年前に次女が原爆資料館前の広場で「オネエサント イッショニ マタクル」と言っていたんだよと、三女に暴露した。するとオネエサンと言ったのは、実は三女のことだったらしい。実際彼女にはお姉さんはいなくて、かの国の学校で三女が2年先輩だったことでそう呼んでいたらしい。だから次女はその時の決意を実現させたのだ。語学の専門学校に入るべく三女とともに来日した。なんて行動力だろうと改めて感心した。  多くのかの国から来ている若者を知っているが、本当にぎりぎりの経済状態でやっていて、ひとたび病気でもしたら、何もかも失ってしまう危険を覚悟で暮らしている・・・様に見える。と言うかそんなことはありえないと楽観的過ぎる様に見える。健康など何も保証されていない僕らの世代から見たらまことに危うい。  若いと言うことは、恐ろしさを知らないこと?思い当たることは大いにあるが。