解決方法

 ある癌を患っているおばあさんの相談を受けた。既に4回手術を受けている。手術を4回も受けているって事はすぐに亡くなる様なものではないような気もするのだが、そこは80歳を過ぎているから詳細な情報はつかめない。膀胱の手術だと言うから僕はポリープのような気もするが、ポリープという言葉に反応しないから違うのかもしれない。最後の手術は全身麻酔だったというから、だんだん悪性になっているのかなと思う。まあ、こうして想像をめぐらすしかない。色々問診して情報を集めているときに面白い話を聞いた。  おばあさんは癌が小さくなったり、進行を遅らせてもらえることを僕に期待していた。当然僕に言うくらいだからお医者さんにはとうに同じことをお願いしている。さすが昔の女性は今と違って、御主人に迷惑をかけたくないのだそうだ。だから自分は元気で長生きをしておじいさんの世話をしなければならないと強く思っている。その願いを聞いた医者がおばあさんにその問題の解決法を教えてくれたそうだ。「あなたがおじいさんより早く死ねばいいんです。そうしたらおじいさんに迷惑をかけなくてすみますよ」有り難い助言としておばあさんは「受け取れるか~」  この会話を交わしてから当然おばあさんは医師と意思疎通が出来なくなった。やり場のない不安感で僕を頼ってきたのだと思う。この話を聞いて医師っていい職業だなと思った。こんな暴言を吐いても患者さんがまだ来てくれるのだから。薬局だったら即、選択肢から外される。教育環境が整った世界に隔離されるがごとく受験競争を勝ち抜いてきたせいで、人間力競争のスキルは育たなかったようだ。こちらのほうの力こそが救うことが出来る人が多いのに。関東のほうでとんでもない事件が起きた。弱いものをまるで虫けらのように痛めつける。国が堂々とやっていることを、庶民がまるで模倣するかのように実行する。取り返しがもうつかないところまで来ているのかもしれない。