分譲地

 何故か知らないが、玉野市は県南なのに山が険しい。同じ県南の牛窓みたいに、丘と呼ぶほうがふさわしい景色ではない。母の施設に行く道中も玉野市に入るとすぐに切り立った山間を抜ける道になる。くねくねと曲がった道を渓流もどきと並行して走る。  今日、毎週日曜日恒例の玉野詣でだったのだが、道中明らかに一区画が変化していたので目に留まった。道路沿いにピンクののぼりが3本立っていて、その様子からすぐに分譲地だと分かる。案の定スピードを落として通り過ぎると、夢何とやら分譲地と言う看板が見えた。聞いたことがある会社名だったように思う。今まで何十年その道を通ったが、そこが更地になっていた記憶はない。だから古い家を壊したか、雑草を刈ったかして突然現れた土地だと思う。50坪あるかなしかだと思う。元々狭い道と渓流もどきに山が迫っているところ。もしかしたらその昔山を削って作った土地かもしれない。その証拠に山側は、石崖になっていた。それも結構荒い石崖だから、中からマムシでも出てきそうな雰囲気だった。ここに家を建てれば雨の日には避難しておかないと怖いなと、直感で分かる。時速30kmくらいに落として横目で見ただけだが、マムシと土砂崩れ、その二つを連想した。  一体こんなところが売れるのだろうかと人事ながら心配になる。売る方も売る方だが、買う方も買う方だ。何を気に入って売るのか買うのか想像がつかない。もしそこに近い将来家でも建っていたら、こんなことを言った責任を取って僕はジャニーズに加わる。  日本中で何百万の家が空き家になっているらしいが、そんな時代に崖の下に家を立てる必要があるのだろうか。南海沖地震でもくれば裏山が崩れそうだ。いつ何が起こっても不思議ではない時代とは、正に現在のことだ。戦争も大震災も経験することなく安全な時代を幸運にも生きることが出来た僕らは幸せだ。でも、それはもう終わった。大災害が日常茶飯事のように起こって、沢山の命や財産や、子供達の将来が奪われている。戦争もアホノミクスでは起こりかねない。  はためくピンクの宣伝文句。売れればいいでは夢の文字が泣く。