不思議

 しまったと思ったが、もう後の祭りだ。「腰掛けさせてもらうよ」と言いながら薬局の中央にあるテーブルに陣取ったから、気持ちは萎えてしまった。悪いことにまだ薬局を開けたばっかりだったから、他の人に気兼ねをすることなく、独演状態になれる。ただただ嵐が過ぎるのを待つだけの状態で、御高説を聞いていたが、さすがに無駄なことは何もないと言われるように、教えられることがあった。ひょっとしたら僕のように「全く知らなかった状態」の人もいるのではないか。果てしないほら話も耐えて耐え抜けば知識になる。  温州みかん以外は収穫してから寝かす時間が必要なのだそうだ。だから温州みかん以外は「みかん狩」なるものはないらしい。このことも知らなかったが、みかん狩りから話が発展して色々な果物の話になった。果物を話題に話しているのにしばしば「バラ科」と言う言葉が聞こえる。どうやらある果物も、他の果物もバラ科らしい。僕は全くこの方面の知識がないから白紙状態だが、妻も驚いたみたいで「今話している果物はバラ科ですか?」と質問をした。僕も聞きたかったが、妻が僕より早く質問をしたので、皆知らないんだと安心した。そこで確認してみると、 スモモ、サクランボ、ウメ、モモ、イチゴ、リンゴ、ビワなどがバラ科なのだそうだ。この果物たちとバラの花がくっつかないで理解できずにいたら妻が「そう言えばどれも花が似ていますね」と言った。その農家の男性が頷いてくれたから妻が言ったことは正しかったのだろう。  それにしてもそうそうたる果物のメンバーが花で有名なバラ科とは。この不思議を何に例えたらいいのだろう。似て非なるものの逆だから、僕とディーン・フジオカの関係でもないし・・・