病原体

 今日、ある学生から完治のお礼の電話をもらった。すんでのところで心療内科の患者になるのを防いだ女性だ。もちろんそんな意図は僕にはなく、予約を入れていたのを取り消して僕の漢方薬に掛けてくれたのが効を奏しただけだ。何も僕は心療内科に否定的ではない。その重要性は十分知っているし、助けられた患者さんも職業柄よく知っている。ただ残念ながら、何が何でも薬物で治そうとする姿勢、いや、逆に、安易に薬物で治そうとする姿勢が目に付くことも多い。だから、できれば自然に治らないかなといつも考えている僕とは相容れないところもある。又、医師の後方に控えているいわゆる製薬会社にはかなり不信感を持っている。「それは鬱かも知れません」などとコマーシャルを流し患者を作るようなことも金に任せてやってしまう。  その女性は、自称過敏性腸症候群で悩んでいたのだが、そうでないことは会ってすぐに分かった。胃腸科では治らないある症状を僕が偶然得意としているから割と早く治ったが、その後3つの症状も全て治ってしまった。若いから治りやすいのだ。僕の経験では計4つも不快症状を持っていたら、4つの病院にかかって薬だらけになっていたところだ。そして恐らくかなりの年月薬を飲む羽目になっただろう。僕は全てを5ヶ月で治してしまったから、日本の健康保険にも貢献した。  漢方薬だからだらだら飲むことはない。治ればやめられる。自然治癒力を利用したマイルドな治療法だから薬からの離脱はいとも簡単だ。本人が決断すればそれで終わりだ。  「あってはいけないことだけど、僕がお手伝いできることがあったら連絡してね」と最後に言っておいた。できれば自然な薬で自分の持っている治癒力で治してほしいこと、製薬会社を儲けさせる為に、何でもかんでも胃袋に入れないようにして欲しいことを伝えたかったのだ。  2月まで全く面識がなかった若い女性が、呪縛から解放されて自由を得た。折角手にしたその自由を、次は国という最大の病原体に奪われないように知恵をつけて欲しい。