舞台

 最近は朝が待ち遠しい。と言っても、元々6時前には起きているから、待ち遠しくて早起きするわけではない。ただ、目が覚めてからワクワクしているのだ。1日が始まることが嬉しくて仕方がない。  嘗てNHKで日曜の夜11時から放送されていた「トンイ」が民放で再放送されているのだ。偶然知ったから、最初から見ることは出来なかったが、まだ始まったばかりだ。当初、一度見たものを再び見ても仕方ないと思っていたが、それがそれが再びはまってしまった。以前NHKで見ていたときは、1週間待たなければならなかったが、今は、月曜から金曜日まで連続だから、待ち遠しいことはない。それにしても、嘗て僕はかなりの忍耐力だったことが分かる。良くぞ1週間待って楽しんだと思う。選択肢がないときは、人は結構忍耐強くなれるのかも知れない。  女優の美しさも売りの一つだろうが、もし多くのファンをつかんだとすればトンイという主人公の人間性だろう。理想とする個性を全部1人の登場人物に集めたらこんな人格になるのかと思わせるほどだ。さわやかな笑顔に隠された知性と勇気、それに正義感。謙遜と奥ゆかしさ・・・まるで・・・まるで・・・まるで・・・そんな人いるわけないじゃろう。いや一人いた、咲様じゃあ。  現実世界では決して遭遇しないような人物に会いたくて僕は(僕らは)ドラマを見るのか。そしてその一瞬慰められているのか。でも僕は現実から逃避するために見ているような気はしない。むしろ少しでも近づいてみたいと、少年のような気持ちになる。台本で与えられるような舞台は僕たちには用意されないが、日常の観客のいない、或いは観客の少ない舞台で同じように振舞える自分になりたいと思う。  「トンイ~」