孤独

 孤独感を抱えている人や社会的に孤立した人は、心疾患および脳卒中のリスクが高い可能性があることが報告された。研究を率いた英ヨーク大学健康科学部のNicole Valtorta氏は、肥満や運動不足などと同じように、孤独感や社会的孤立をリスク因子として捉える必要があると指摘している。今回の研究では、計18万人以上の成人を対象とするデータを分析した。対象者のうち4,600人強が心筋梗塞狭心症を発症または死亡し、3,000人強が脳卒中を発症していた。統合したデータの解析から、孤独感および社会的孤立があると、心筋梗塞または狭心症のリスクが29%高く、脳卒中リスクが32%高いことが判明。研究グループによると、孤独感は免疫力の低下、高血圧、早期死亡にも関連することが明らかにされているという。

 孤独と孤立を分けて考えるなら、孤独は悪いものではない。青年期のなんともいえぬ孤独感は、アパートの一室にも存在したし、パチンコ屋の喧騒の中でも存在した。同級生が授業を受けている時間、繁華街のジャズ喫茶の薄暗い片隅で、およそや薬学とは関係ない文庫本を読み漁っていたあの頃、僕は孤独の極みだった。僕には尊敬すべき先輩達や、愛すべき後輩達がいて、多くの時間それらの人と行動をともにしたが、結局は孤独感から逃れるためだったのかもしれない。ただし、ひとたびアパートに帰ると、あっという間に孤独感にさいなまれた。たむろすることで解決できるものなどなく、1人アパートで思案した結果しか、行く道を示してくれなかった。孤独はそうしてみると、意外と生産性が高く、そればかりか感受性まで研ぎ澄ましてくれ、多くの言葉や多くの想いを与えてくれた。あの時期が無ければ僕には人様に語るようなものは何も無かっただろう。  僕が今お世話している人の中に、孤立した人も結構いるが、意識してかしないでか孤独を楽しんでいる人も多い。僕は勝手に、無口なのに心の中に溢れんばかりの言葉を持っていて感性がとても豊かな人が孤独、雄弁なのに攻撃的な言葉遣いをし、相手を容易に否定し、揚げ足取りに終始する人を孤立と呼ぶ。だから孤立している人と話をしたり、メールのやり取りをするのは辛い。反対に孤独であろう人との会話やメールのやり取りは楽しい。  孤立が健康に及ぼす害を研究した論文が発表されたが、当たり前と言えば当たり前だ。心も肉体も緩む時間がないのだから、緊張の連続だ。僕自身も含めて「脱力」勧めているが、プッツンしないためにも、時には孤独を深く味わいたい。