石井響宇山

 何故、香川県の和太鼓の水準がこんなに高いのだろうとずっと思っていたが、その理由が分かった1日だった。  思えば去年の「讃岐太鼓のつどい」にかすれた声で挨拶に立っていた人がいた。病気と戦っていると言っていて、惜しくも亡くなったらしいが、ひとえにその方の功績らしい。いわば、香川県の和太鼓を育てた人といえるのかもしれない。和太鼓の創生期に全国的に活躍された人でもあるらしい。今日はその方を偲ぶ大会にもなったみたいだ。6団体出演したが口々に業績をたたえていた。  ライオンズクラブが主催と言うことで、毎年無料のコンサートだ。内容からしたら2000円以上は十分とれる。ほんの少し空席もあるから県外から、7人連れて行く僕にとってはこの上もない条件だ。今日、和太鼓が初めてという女性も数人いたが、「幸せ」を連発してくれた。かの国でコンサートなどと言うものはまず経験したことがないから、会場に入っただけで感激してくれ、まして質の高い演奏を2時間半に渡って聴けたのだから、その言葉は決して大げさではない。それが証拠に、もう何十回と和太鼓演奏を聴いている僕でさえ、幸せと思えるのだから。まして今回のように、ぎっくり腰上がり、風邪の治りかけ、睡眠不足、虫歯と4重苦の状態で無事に行って来れたのだから感激もひとしおだ。  毎回コンサートのたびに是非来年も元気で来ようと思うのだが、なかなかその保証は得られない。ただ、コンサートのたびに心から感激することが、来年のスタートになることだけは確かだ。今日の6団体の演奏を聴いている間、4重苦が全て姿を消していた。どういったホルモンがその時の僕を支配していたのか分からないが、少なくとも快楽に近いホルモンだったに違いない。きな臭い奴のおかげで不快なホルモンに支配され続けている昨今の僕には救いの瞬間だ。