不器用

 まあ、本当に多くの人に助けられての毎日だ。僕だけではない。恐らく、誰もがそうしてなんとか暮らすことが出来るのが現代だ。あまりにも身の回りに物や事が溢れすぎて、とてもとても個人の力などでは対処できない。その道に秀でた人の力を借りるしかない。それがプロであったり、素人であったりはするが。  今日もまた助けられた。今日は素人だ。昨日からプリンターが紙を引き込まない。姪が何とか工夫していわば強引に紙を引き込ませて漢方薬の宛名書きをしていたが、今日は宛名書きに加えて、学校の環境調査の報告書を作成しなければならなかった。折角早起きして原稿を仕上げたのに、印刷が出来ない。こんなことでてこずるのがいやでストレスを抱えたまま仕事をしていたが、何度挑戦しても印刷できないのでついに姪に頼んだ。姪がその道に秀でているわけではないが、僕よりははるかに詳しいのだ。だいたい我が家でパソコン関係の不具合が生じたら、まず姪に頼み、それでダメなら娘婿に頼み、それでダメなら漢方問屋の専務さんに頼む。今まで運よく、このルートで解決できなかったパソコン関係のトラブルはない。今回もいつものルートに乗せた瞬間から僕はストレスから解放される。気の毒だが、明らかに今度は姪がストレスを背負い込むことになる。  姪が僕より優れているところは、困難にぶつかったら、インターネットで修復方法を探すことが出来ることだ。今日も最初は自力で挑戦していたが、それでは無理と判断したのかいつもの調子で解決方法をインターネットで探した。そしてコードを外してパソコンを逆さまにしていた。すると中から数センチの曲がった針金が出てきた。「こんなものが紙を引き込むところに入っていた」と見せてくれたところで、僕はプリンターが直ることを確信した。案の定1日半ぶりに従来どおりに使えることになった。こんなことが気になりながら仕事をするのが嫌で、妻に新しいプリンターを買って来るように何度言おうとしていたか。僕はお金よりストレス優先だ。  安易な僕に比べて、姪は探求家だ。挑戦するところが素晴らしい。若いのか、質素なのか分からないが、試みてくれるのがありがたい。このようになんでもないことで多くの人に助けられる。何でもあるときに今までの多くの手助けにお返しをしなければと、不器用な僕は思う。