紅葉

 本当に行ったのだろうか。牛窓とほとんど気候の差がない岡山の後楽園に紅葉を見に。牛窓は温暖なところだから、まだ山は緑だ。岡山市も同じはずだ。  「モミジ ミニイキタイ」とかの国の女性達が言うから、何とかしようと県内の紅葉情報を調べたら、まだ県南は紅葉は始まっていない。山を見れば分かるが、「コウラクエン モミジ キレイ」とあまりにも自信を持って言い張るから、ひょっとしたら同じ緯度でも後楽園の方が早いのかなと心配になって調べてみた。当然といえば当然だが、まだ牛窓と同じで、紅葉はこれから始まるって辺りだった。  そこで、後楽園に行っても紅葉は見ることが出来ないと教えた。すると「ダイジョウブ モミジ キレイ」と頑として紅葉が見ごろであることを強調する。花を始め自然が好きな人たちだから、どうせならと岡山県の紅葉の名所を調べ、好きなところに連れて行ってあげると提案した。特に花が好きな数人が喜んで早速メンバーを募ったが、18人のうち14人が行きたいと手を上げた。その時点で、この話はなかったことになる。8人乗りの僕の車ではどうしてあげようもない。公平に拘る僕は人選などしないし、させたくもない。和太鼓などのコンサートは表を作って公平に聴きにいける様に調節しているが、こうした突発的なことは管理できない。そのことを伝えると「オトウサン ダイジョウブ ミンナデ デンシャノル コウラクエン モミジミニイク モミジ キレイ」とすぐに答えてくれた。これで和を乱すことはない。ただ、紅葉の見ごろだけは譲らない。何が彼女達に間違ったタイミングをインプットしたのか知らないが、久しぶりに太陽がのぞいた牛窓の昼下がり、山は緑を深くし、銀色のジェット機が2機、飛行機雲を作ることさえ忘れて青空を背に飛んでいた。