6トンを超える体をもちながら70年以上生き、ほとんどがんにならない動物―それがゾウである。この世界最大の陸生動物ががんにならない理由の解明に取り組んだ研究チームが、その秘密を突き止めたという。 研究著者である米ユタ大学のJoshua Schiffman氏は、「男性の半数、女性の3人に1人は生涯にがんを発症する。加齢とともに細胞の損傷を修復する能力が低下するため、がんは加齢による疾患であるといえる」と説明する。ゾウの体はヒトの100倍もあり、細胞数も多いことから、確率的にはすべてのゾウががんで死んでもおかしくない。そのゾウががんにならないという不思議な能力は科学者らの関心の的だった。  動物園の記録を分析した結果、ゾウががんで死亡する確率は5%未満であることが判明した(ヒトは11~25%)。さらに、ゾウの全ゲノムの解析を実施し、特に腫瘍抑制因子として知られるP53遺伝子に着目した結果、ヒトにはP53が2コピーしかないのに対し、ゾウには40コピーあることがわかった。 次に、8頭のアフリカゾウおよびアジアゾウから採取した血液を、ヒト10人の血液と比較した。これらの血液検体に放射線を照射し、DNAに損傷を与えた。ゾウの遺伝子はヒトに比べ、損傷した細胞を修復するよりも死滅させる比率が高いことがわかった。その数は健康なヒトの2倍以上だった。 付随論説の著者である英ロンドン大学がん研究所(ICR)のMel Greaves氏は、「本当の謎は、なぜヒトはがんに対する防御力がこれほど弱く、がんの発生率が高いのかということだ」と述べ、その答えはヒトの社会的進化が異常に速いことにある可能性が高いと示唆している。ゾウは喫煙することも、過剰なカロリーを摂取することもない。「多くのがんは予防できるものだ」と同氏は述べている。

この文章を見つけたとき僕はかなり興味をひかれた。象がガンにかかりにくいと言う導入部分の文章と、人のガンに対する防御力がこれほど弱いと・・・と、嘆きにも似た言い回し、そして社会的進化が異常に早いと言う知見が特に興味深かった。と言うのは、最近「仁」の再々放送を見ていて、史実にどれだけ忠実なのかは別として、わずか150年前の日本が、描かれている通りだとすると、余りにも時代が早く進みすぎているのではないかと恐ろしくなっていたのだ。同じ印象を、この学者が癌と言う病気で表現したのが心強かった。凡人と学者が同じような感覚に陥るのも面白い。もしかしたら嘗て人間が何千年もの歳月で変化させたものをわずか1時間くらいでやってしまっているのではないかと思うのだ。その変化についていけるほど、細胞レベルでは強靭ではなかたってことではないのか。もうこの位でいいだろうと折に触れて考える。これ以上何を欲するのだと思う。何をこれ以上便利にしようとするのかと思う。1年単位で暮らしていた人間が月単位になり、そのうち1日が単位になり、それが1時間になり1分になった。僕らはいまや秒速で暮らしている。  もつ訳が無い。細胞が心がもつ訳が無い。ひずみを訴えている人はそこかしこに溢れている。制御不能の人たちが身をもって訴えている。