移住

 牛窓に移住したいと言う人の希望に沿えるだろうと、鍵を預かって家の中外を見てもらった。家の中には何もなくて片付いてはいるのだけれど、それでも住んでいた人の意図みたいなものが色濃く残っていて、面白いものだなあと1人感じ入っていた。借りたい人と、紹介した人が友人同士みたいで、ハイテンションの話しぶりが面白かった。女性同士の友人ってこんな感じなのかと、そこもまた面白かった。  どうしてそこに僕がいるのかふと自分でも分からなくなるような設定だが、望まなくても一登場人物になると見えてくるものもあり、少しは視野が広がる。それも恐らくこんなことでもしないと決して触れることがなかっただろう世界ばかりで、この年齢になって広がる分野もあるものだと感心する。  放射能から逃れてくる人も、都会の喧騒から逃れてくる人も、不自然からの脱出だから意識が高い。それぞれが個性をまとっている。僕ら土着の人間も、彼らも地に足をつけてはいるけれど、どうもその地が少々違うかもしれない。僕らは明らかに土だが、彼らは知かもしれない。どうやら知にも足は着くらしい。  

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