時代遅れ

 漢方薬の処方箋を持ってきた方のために漢方薬を作っていたら、電話が鳴り、娘婿が出た。なにやら蕁麻疹の相談みたいだった。僕に振ってくるのかと思っていたら、自分で相談を受けていた。話の成り行きからストレス性のものだろうというようなことを言っていた。蕁麻疹を単なるアレルギー反応として捉えて治すのが一般的だが、原因を心因性のものに求めて治すのは誰もが出来るものではない。でも彼は、恐らく相談内容から類推したのだろう、精神領域の漢方薬で対処できると答えていた。主に病院の処方箋調剤を中心にやってくれているのに、いつ覚えたのだろうと不思議だったし嬉しかった。  同じように僕が手を離せなかった時に、漢方薬の処方箋を持ってきた鼻炎の方がいた。薬を作って患者さんが来るのを待っていたのだが、運悪く患者さんがやってきたときに僕がまたまた応対できなかった。娘が応対したらしくて、その方の印象を教えてくれた。僕はその人の印象より養生法を教えて上げれなかったことが気になった。ところが娘がその後、こんなことを説明したと言って教えてくれた。その指導内容は僕がもし応対していても全く同じことを言うだろうというものだった。結局僕の心配は不要だったのだ。  この2年間、市民病院の処方箋を受けたせいで、漢方薬は勿論、OTCですら応対するチャンスが激減していたのに、僕が応対するのを視界の隅のほうで捕らえていたのかもしれない。薬剤師だから基礎は分かる。応用部分は体験を積むしかない。自分達が直接応対していなくても、仮想空間で応対していたのかもしれない。  7月から本来の薬局に戻る。家族一同で楽しみにしている。こんな薬局はいまどき時代遅れのようで、それでいてなくてはならないものを目指そうと思っている。何処に行っても治らなかった人を、少しでも改善に導く。これに尽きると思っている。