食い物

 息子のところに、ある調剤薬局チェーンの薬剤師が、生薬のリストを持ってきたらしい。息子が煎じ薬を処方していると聞いて、処方箋を回してほしいということだ。息子はそのリストを「ふーん」と言って受け取ったらしいのだが、今日別ルートから面白い話を聞いた。  ある漢方問屋に、急遽生薬の在庫が無くなって取引を依頼してきたらしいのだが、何を言ってきているのか分からなかったらしい。「シバコと、クズネ」が欲しかったらしいのだが、生薬にシバコと言う名前のものもクズネと言う名前のものもない。後で分かったらしいのだが、シバコはサイコ(柴胡)でクズネはカッコン(葛根)だったらしい。実は何も漢方薬のことを分からなくても、薬剤師なら材料さえあれば調剤できる。ただ、本当の分業と言うものは、薬剤師が処方にまで介入できて意見が言える位対等のものでないといけない。ところが日本の分業は、医者の機嫌さえとっていれば、お金がガボガボ入ってくるのが実情だ。患者の意向を尊重しなくても医者のご機嫌さえ損なわなければ高収入は保証される。だから1枚でも多く処方箋を獲得しようとするのだ。患者が治ろうが治るまいが関係ない。処方箋と言う名の金券を回収することが全てだ。  若くして先生と呼ばれる薬剤師の人格は、いつ何処で鍛えられるのだろう。社会人1年目から高収入で、もし底辺を知らないとなると、本当に病んでいる人達の傍らに立ち、回復を手助けできるのだろうか。単なる白衣を着た集金マシーンではないのか。現場に立たずに薬剤師を雇うだけの薬剤師の高給もやっと問題になってきた。業界団体と政治屋の美味しい関係が物言わぬ庶民を食い物にする。