岡山県鳥獣保護センター

 まるで工事現場のコンテナハウスみたいな建物に、娘が保護した鳩を小さな段ボール箱に入れて持ち込んだ。机が一つ置かれただけの、わずか3畳位の部屋に誰もいなかったので声をかけると、奥から若い女性がすぐに現れた。昨日電話連絡をしていたのですぐに理解してくれたみたいで、混雑していた池田動物園の駐車場が使えたかとか、無料にしてもらえたかとか、昨日僕に教えてくれていたことを確認してくれた。予備知識をくれていたので、スムーズに岡山県鳥獣保護センターまでたどり着けた。実は、薬剤師から池田動物園は休日にはかなりの渋滞を起こして車が進まないと教えてもらっていたので、昨日の助言はとても役に立った。(鳥獣保護の用事のときは、警備員が優先して車を通してくれる)  おもむろに箱の蓋を開けようとすると、女性が「後ろの戸を閉めてください」と言った。今日は備中国分寺のライトアップを見に行くために、かの国の女性6人と一緒に行動していたのだが、彼女達を締め出す格好になった。でもすぐに僕にもその言葉の意味が分かった。鳩が飛んで逃げるかもしれないと言うまことに単純な懸念でそう指示したのだ。でもその簡単なことすら僕ら素人には分からない。そうした当然の配慮は勿論だが、その後鳩を取り出して1分もしないうちに、的確な判断(僕には本当は的確なのかどうか分からないが、納得するしかない)を下し、状況を教えてくれた。  我が家に保護されたときには、バランスが取れずに横になるような体制がほとんどだった。それがだんだんバランスよく座れるようになって、今朝などは立ち上がることも出来るようになった。足を触って「これは足が折れていますが、時間がたってしまっているので不自然な格好でくっついています」と診断してくれた。もう正常な状態でくっつけることは出来ないが、結構それでも支えにはなり、自然に返しても生きていけると言われた。「岡山駅に住みついている沢山の鳩の中にも同じようなのは結構います」と教えてくれたのは結構勇気を与えられた。「ああ、生きていけるんだ」と安堵した。と言うのは4日も一緒にいると情が移る。その若い女性が指摘してくれたように、鳴き方がまだ幼い鳩の特徴だから、なおさらだ。  「少し訓練をした後、自然に帰します」と女性が言ってくれて、この数日の懸念が全て払拭された。たった幼い一羽の鳩の保護でもずいぶんと達成感を感じることが出来た。どんな小さなことでも全力を尽くすのはいいことだ。  それにしても対応してくれた若い女性の印象は、「とてもその仕事に合っている」に尽きる。物静かだけれど、的確な指示や診断が出来る。反面とても細やかな配慮をしてくれる。その全てがわざとらしくなく、その女性の個性そのままなのがよく伝わってくる。どういった肩書きか知らないが、何軒かそれまでに相談した獣医のけんもほろろの応対に比べれば、動物の世話をする人たちが備えて欲しいものをすべて備えているように思えた。彼女もまた獣医かもしれないが。