臨場感

 昨日から我が家に珍客がいる。  昨日の夕方、娘が隣の駐車場から鳩を1羽拾ってきた。拾うと言うより丁度捨てているところに通りかかったから、救ったと言えるだろう。と言うのは、駐車場の脇は草がかなり伸びていて、そこに捨てられそうになっていたのだ。そこに飛べない鳩を捨てたりしたら、猫か蛇にやられるのは必定だ。  捨てていたのは近所の人で、会社で糞をするから困って草むらに捨てようとしていたらしい。「どうせゴミみたいなものだから」と言ったせりふが我が家で話題になり、そう言った人物の評価が格段に下がった。近所なのに交流があまりないから人となりと言うものを知る由もなかったが、残念ながら評価に値しない。  娘は早速、広島にあるNPOに連絡していた。「警察に届けましたか?」と言う返事に僕も驚いたが、意図して野生の動物を殺したら犯罪になるらしい。それはともかく、その団体が保護してくれることになった。娘は今度の連休に広島に連れて行くらしい。どうして傷ついた鳩のためにそこまでするのだろうと思っていたが、2日間鳩と一緒にいると、結構情が移ってしまう。鳩にどれだけの感情があるのか知らないが、人が近寄っても驚きもせず恐れもしない。それどころか、優しく撫でられるのを喜んでいるようにも見える。鳥類は恐竜の子孫で結構怖い顔をしているが、鳩は近くで見てもかわいい顔をしている。だから平和の使いとして親しまれているのだろうか。  今日はひょっとしたらと思って、公の機関や動物病院に連絡を取った。あわよくば娘達を広島に行かせたくなかったので、それらしきところに電話したのだが、野性の鳥を診てくれる様な獣医はいないし、保護してくれる機関もない。仕方ないからどうしても広島に行かなければならないが、とんだ事から公の機関の臨場感のなさが浮かび上がってきた。