割り

 最近息子のほうから、こんな患者にはどんな漢方薬を処方したらいいか教えてくれと頼まれる機会が増えた。今までの病院では自分が中心で患者さんを診ていたのが、今度の所は今のところ新参者で様子見らしい。だから患者さんに多くの時間をとって診察が出来るらしい。そうなると今までは無かったことらしいが、患者さんの要望が多岐にわたり現代薬では対処できなくなる。だから僕に質問と言うことになるのだが、薬剤師にとっても医師にとってもそんなに難しいことではないのに、結構高い壁が存在して不自由を感じる。  医者が処方箋で漢方薬を使おうとすればかなり縛りがきつくて、僕が暖めていた処方が完全には使えないのだ。誰が決めたのか知らないが、医者が使うのは、この症状に限ってというのが決められていて、そこから外れれば使えない。そもそも漢方薬に病名はいらないのに、決められた病名にしか使えないとなると、根本から存立基盤が違っている。薬局なら、効能書きと違ったことに使っても、飲んでくれる人が納得してくれれば問題ない。僕もしばしば婦人薬を男性に飲ませたりする。「生理はない」と冗談で返す人はいるが、文句は言われない。こうした自由な発想で、漢方薬の能力を導き出せれれば医者も今まで以上に漢方薬を使いこなせると思うのだが、そこはしっかりと法律の歯止めがかかっていて、方手落ちの処方しか作れない。  僕は病院のほとんどが使う〇〇〇の漢方薬が濃度が薄くて効かないのだろうと思っていたが、そもそも出されている処方が片手落ちなのだ。だから効果が出せるのは簡単な症状に使う数種類に限定されているように見受けられる。  誰かが「滅多に効かない」と教えてあげれば保険から適応が消え、生薬の保護に貢献できると思うのに、天下り予備軍にとっては、自分の天下り先に失礼なことはしないだろう。割を食うのはここでも又庶民で、大量生産、大量消費、大量浪費?に関わっている者達がいい目をする。